彼と私のかくれんぼ

「庄司くん?」

「いーよ、今はわかんなくて。うん、そこはこれから俺が頑張って、伝えるから」

「え? どういうこと?」

「だから、今はいいって。とにかくクレープ、食べに行こ?」

庄司くんは早口でそう言って、私に背中を向けて歩き出す。

私もいつもより早足になって、庄司くんの背中を追いかけたのだった。






このイベントがきっかけで、私は庄司くんと話をすることが増えていった。

それから一か月近くたった、十二月。

「白石のことが好きだから、一緒にクリスマスを過ごしたい」

そんな言葉で告白をされて、私が大慌てしたのは、今でもみんなの格好のネタだ。

考えられないことだけど、人気者の庄司くんは、なぜか地味な私のことが好きだったらしい。

だけど、私と距離を縮めることが中々出来ずに悩んでいたときに、あの文化祭のイベントで偶然にも私と同じカードを手にした。

それをチャンスだと捉えた庄司くんは、ユーコさんたちに言わせると『かなり必死で』私を口説いていたんだとか。

鈍感だった自分が情けなくも思うけど、庄司くんと一緒に過ごす時間が心地よかった私は、慌てつつもイエスの返事をした。

あれから七年。

これは、再び彼とかくれんぼをすることになった、平凡な私のちょっとだけ波乱の一日の物語。
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