彼と私のかくれんぼ
「うん。それでね『菜穂子は近い将来、紗英ちゃんを彼に取られちゃうから、今の時間を大切にするんだよ』って言われちゃった」
そう言って、菜穂子ちゃんが目を細めた。
私はなぜ、菜穂子ちゃんがそんな表情をするのかよくわからなくて首を傾げると、菜穂子ちゃんはクスッと小さく笑った。
「ま、今はわからなくても近いうちにわかると思うよ。だから、今日はショージくんに紗英を渡すまでは、私が紗英を独り占めよ」
「私だって、春田さんから菜穂子ちゃんを奪って楽しむもん」
「もー、紗英ってばうれしいこと言ってくれちゃって」
「菜穂子ちゃんこそ」
ふたりで笑いあっていると、今でも学生時代に戻ってしまう。
新幹線の中でも私たちの話題は尽きることもなく、ずっと笑いあっていた。
東京に着いた私たちは、少し遅めのランチタイム。
菜穂子ちゃんが調べてきた、OLさんに人気のお店へを足を運ぶ。
時間はお昼を少し過ぎていたにも関わらず、お店の前にはまだ入店を待つ人の列ができていた。
「うそ、もう一時過ぎてるのに、まだ並んでるの?」
「やっぱり東京は人が多いから、並ぶのかなあ?」
ふたりで並んでいると、待ち時間も気にならない。
菜穂子ちゃんの銀行のクセのある上司の話に相槌を打っていたら、私たちの名前が呼ばれて入店する。
「美味しい~っ!」
「並ぶ理由がわかるねぇ」
感嘆の声を上げながら食事を済ませた後は、菜穂子ちゃんのリクエストでショッピング。
おしゃれ女子でもある菜穂子ちゃんは、流行にも敏感だ。