彼と私のかくれんぼ

そう思ったら、少しだけ彼が遠く感じてしまい、心がキュッと苦しくなる。

ダメダメ、こんなマイナスな感情を持つなんて。

今からせっかく庄司くんに会うんだから、笑顔でいないと。

そうやって言い聞かせて、自分を奮い立たせる。

いくつも並ぶビルの中から松嶋グループのビルを見つけた私は、ホッとして大きく息を吐いた。

「あそこにビルがあるということは……」

キョロキョロと辺りを見渡してみると、道路に面した場所にカフェがあるのを発見した。

道路沿いだし、店内もガラス張りになってて見つけやすそうだし、あそこで待つことにしよう。

そう決めてお店の方へと体を向けたとき、少し先に見知った背中を発見した。

あの雰囲気って、庄司くんじゃないのかな?

ちょうど地下鉄の駅から出てきたところであろう庄司くんは、まっすぐと会社の方へと歩いている。

きっと一度社内に戻るんだよね。でも、せっかく会えたし、スマートフォンでメッセージを送るよりも直接言ったほうが早いよね。

そう思った私は庄司くんの背中を追いかけた。

あともう少し近づいたら声を掛けよう、そう思っていたとき、庄司くんが軽く右手を挙げた。

「お疲れ、もう帰りか?」

庄司くんの声に吸い寄せられるように、ふたりの女性が笑顔で近づくのが見えた。

「友樹こそ、お疲れ様。まだ仕事?」

「ああ。でも今日は約束あるし、少ししたらすぐ帰るよ」

「相変わらず働くねぇ。うちのエースは」

「何言ってんだよ」
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