彼と私のかくれんぼ
そう言って三人は笑いあっている。
……私がここにいることを、庄司くんに気づかれたくない。
そう思った私の体は正直で、トボトボと庄司くんから距離を取って離れていく。
私が離れていくにつれて、三人の声も聞こえなくなってきて、私は無意識に止めていた息を吐いた。
でも思ったより私の歩みは遅かったようで、さっき庄司くんと話していた女性ふたりが私の横をすり抜けて行った。
そして、ふたりの会話が私の思考回路をストップさせたのだった。
「友樹の彼女って、地味な感じの子だったよね。なんであんなのと付き合ってんだろ」
「そうそう。この間の飲み会で写真見たけど普通だよね。全然釣り合ってない」
私を追い越したふたりは、とても綺麗な人たちだった。
お手入れをしっかりしているツヤツヤした髪の毛に、夕方になってもテカリのない綺麗なお肌。
きっと、庄司くんの横に立ってもお似合いに見える人たちだ。
「ハハハ……。わかっているけど、知らない人に言われるのもキツイなあ……」
下を向いたら涙がこぼれそう。
こんなところで泣くなんてみっともない。そう思って必死に上を向いた。
こんなグシャグシャな気持ちで庄司くんになんて会えない。
どうしたらいいのかわからずに立ち止まる私の手の中で、スマートフォンが震え出した。
『仕事終わり~。今から設営の手伝い行ってくる。明日会えるの楽しみにしてるよ』
差出人はリエさん。
そのメッセージを見て、私は駆け出した。
駆け出した私がたどり着いたのは、本当なら明日来るはずだった、辻井くんの個展の会場。
リエさんのメッセージを見て思わず来てしまったけど、迷惑だったかな……。