彼と私のかくれんぼ
「ダメだよ、リエ。ショージ、白石さんと食事する店は決めてるみたいだし」
辻井くんの言葉に、私は目を丸くする。
そんな私を見て、辻井くんがニッコリと微笑んで話を続ける。
「少し前に会ったときにさ、どこがいいかなあって必死で考えてたよ。相当白石さんが来るのが待ち遠しいみたいだったから、僕たちが引き留めちゃ悪いよ」
「そっかあ。でも、ショージ待つ間ならいいでしょ。ね?」
「うん。私もひとりじゃ心細いし、一緒させてもらえると嬉しいな」
私のその言葉に、リエさんが大きくうなずいて私の腕に自分の腕を絡ませた。
「そうと決まればさ、行こう。ヒロ、道路の向こうのあのカフェでいいよね?」
「ああ」
「……名前で呼んでるんだ……」
さっきの光景が頭の中をチラつく。
庄司くんのことを『友樹』と、名前で呼んでいた美人のふたりが頭から離れない。
ヒロ、とサラリと辻井くんの名前を呼ぶリエさんに思わず反応してしまうと、ふたりが不思議そうな目を私に向けた。
「白石?」
「……あ、ごめん。なんでもないよ。独り言」
リエさんは私のその言葉を素直に信じてくれたけれど、辻井くんはそうではなかったみたい。
そういえばさ、とサラッと話し出した。
「僕、白石さんがショージを呼ぶときの感じ、いいなあって思ってるんだ」
「え?」
「白石さんだけなんだよ、『庄司くん』って、ちゃんと名字を呼んでるの。僕たちって、ニックネームみたいな感じで呼んでるんだよね」