彼と私のかくれんぼ
私は知らない東京の街を、わけもわからず走り続ける。
当然周りの人たちは、走っている私を見て怪訝そうな顔をしているけれど、今はそんなことは気にもならない。
だけど、元々運動神経もそんなによくはない。すぐに息切れを起こしてしまい、立ち止まってしまった。
ハアハア、と肩で大きく息をしていると、目の前に見えたのは東京タワー。
東京タワーのこんな近くに来たのは初めてだ。
「うわ、大きい……」
テレビで見ているよりも想像以上に大きくて、ぼんやりと口を開けて見上げる。
冷静になって東京タワーを見上げていると、一体自分は何をしてるんだろうって思いだしてきた。
お祝いをしに来たはずなのに、辻井くんとリエさんには心配をかけさせている。
せっかく会いに来ているのに、一番会いたい庄司くんから逃げてしまっている。
「何やってんだろ、私……」
「ホントだよ。何してんだよ、紗英」
その言葉に勢いよく後ろを振り向くと、十一月にも関わらず、額に汗を浮かべた庄司くんが立っていた。
「庄司くん……」
「お前はホントに、隠れるのが好きだな」
そう言って笑って、私の頭を優しく撫でる庄司くん。
いつもと変わらないその手の優しさに、目に涙が溜まっていく。
「ま、紗英がどんだけ俺から隠れたって、俺はいつでも見つけられる自信はあるけどな」
ニカッと笑うその笑顔は、七年前からちっとも変わっていない。
「で、俺との待ち合わせから逃げて、一体何があったんだよ」