彼と私のかくれんぼ
美人で目立つから遊んでいるように見られるけれど、リエさんの中身は私以上に乙女だ。
実はその画家志望の辻井くんに高校一年生の頃から一年以上の片想いを続けている。
「紗英。リエさんの為にもここは苦手を克服していこうよ」
「三年が相手だったら任せてよ。彼に言って何とかしてもらうからさ」
一年先輩の彼氏のいるユーコさんが、可愛くウインクをしてくる。
ああ、これは絶対逃げられないパターンだ。
覚悟を決めて、私は力なくうなずいた。
心の中で、当日季節外れの台風でも訪れないだろうかと思いながら。
そして迎えた文化祭当日。
私の思いとは裏腹に、文句のつけようのないくらいの澄み渡った青空の中、文化祭は開始された。
カードの入った封筒を受け取って、私は大きなため息をつく。
「こら、紗英。幸せ逃げてくよ」
「もうここにいるって時点で、私の幸せはないかも知れない……」
私の言葉をスルーして、菜穂子ちゃんは封筒の中からカードを取り出した。
「わあ、可愛い。これってリスのしっぽっぽくない?」
声につられて菜穂子ちゃんの手元を見ると、確かに描かれているのはリスのしっぽのようなもの。
なるほど。菜穂子ちゃんが左半分だから、右半分にはきっとリスの顔が描かれているんだろうな。
「紗英はどう?」
「うん……」
テンションがまだ上がらない私は、小さく返事をして封筒の中身を開ける。
そこにあったのは、誰かの顔の右半分だった。
頭がちょんまげだから、どこかの戦国武将とかなのだろうか?
「誰だろう、この人」
「さあ? 私も歴史苦手だからなあ。紗英もわかんない?」
「うん。もしかしたら辻井くんのオリジナルなのかも知れないしね」
このイベント自体は面白いとは思えないけれど、私の手元にある誰かの顔は、とても上手に描けていて、辻井くんの作品は素直に素敵だと思えた。
「残念ながら、私と紗英は違うイラストだったから、これからペアの人を探さなきゃだね」
「そんなぁ」
「そんな気弱にならないの。さ、行くよ」
と菜穂子ちゃんが元気に私の腕を引っ張ったのと、
「誰かリスのしっぽ持ってないですかー?」
実はその画家志望の辻井くんに高校一年生の頃から一年以上の片想いを続けている。
「紗英。リエさんの為にもここは苦手を克服していこうよ」
「三年が相手だったら任せてよ。彼に言って何とかしてもらうからさ」
一年先輩の彼氏のいるユーコさんが、可愛くウインクをしてくる。
ああ、これは絶対逃げられないパターンだ。
覚悟を決めて、私は力なくうなずいた。
心の中で、当日季節外れの台風でも訪れないだろうかと思いながら。
そして迎えた文化祭当日。
私の思いとは裏腹に、文句のつけようのないくらいの澄み渡った青空の中、文化祭は開始された。
カードの入った封筒を受け取って、私は大きなため息をつく。
「こら、紗英。幸せ逃げてくよ」
「もうここにいるって時点で、私の幸せはないかも知れない……」
私の言葉をスルーして、菜穂子ちゃんは封筒の中からカードを取り出した。
「わあ、可愛い。これってリスのしっぽっぽくない?」
声につられて菜穂子ちゃんの手元を見ると、確かに描かれているのはリスのしっぽのようなもの。
なるほど。菜穂子ちゃんが左半分だから、右半分にはきっとリスの顔が描かれているんだろうな。
「紗英はどう?」
「うん……」
テンションがまだ上がらない私は、小さく返事をして封筒の中身を開ける。
そこにあったのは、誰かの顔の右半分だった。
頭がちょんまげだから、どこかの戦国武将とかなのだろうか?
「誰だろう、この人」
「さあ? 私も歴史苦手だからなあ。紗英もわかんない?」
「うん。もしかしたら辻井くんのオリジナルなのかも知れないしね」
このイベント自体は面白いとは思えないけれど、私の手元にある誰かの顔は、とても上手に描けていて、辻井くんの作品は素直に素敵だと思えた。
「残念ながら、私と紗英は違うイラストだったから、これからペアの人を探さなきゃだね」
「そんなぁ」
「そんな気弱にならないの。さ、行くよ」
と菜穂子ちゃんが元気に私の腕を引っ張ったのと、
「誰かリスのしっぽ持ってないですかー?」