彼と私のかくれんぼ
思いがけないプレゼント


電車に揺られること十五分。

駅を出て目の前にある商店街を突っ切った先に、そのお店はあった。

大通りから少し脇に入った道の行き止まりにある、隠れ家のような小さなお店。

お店の名前を見て、私は目を丸くさせた。

「もしかして庄司くん、このお店って、学生時代下宿してたっていうところ?」

「うん。紗英、行ってみたいって言ってただろ?」

庄司くんは学生時代、今では珍しい下宿生活を送っていた。

大学が決まって部屋探しに来たときに、たまたま見つけたこのお店でお昼ご飯を食べた庄司くんが、今日自分が地方から住む部屋を探しに来ていることを女将さんに話したことがすべての始まりで。

それを聞いた大将と女将さんが、庄司くんのことをとても気に入って、『うちの二階に住まない? 朝食と夕食付けるわよ』と、下宿の話を持ってきたらしい。

こうして庄司くんは、大学時代の四年間をこのお店の二階で過ごし、就職を機に離れたけれど、今も交流も続いている。

「だって庄司くんから聞く大将と女将さんの話、すごく楽しかったんだもん。お料理も美味しいって聞いてたし」

私が目を輝かせると、庄司くんはとても嬉しそうに微笑んだ。

「向こうも紗英に会いたがってた。首を長くして待ってたと思うから覚悟しろよ」

庄司くんが扉を開けると、優しい目をした女性が振り向いた。

「いらっしゃいませー。あら、友樹くん、待ってたのよ」

「こんばんは。少し遅くなってしまってすみません」

「いいのよ、別に。入って入って」

ニコニコと笑いかけてくれる女性に、私もペコリと頭を下げる。

「あなたが紗英ちゃん?」

「は、はい。白石紗英です。初めまして」
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