彼と私のかくれんぼ
自分の気持ちを告げてくれる庄司くんの耳がほんのり赤く染まっていて、それが私の心を温かくさせてくれる。
庄司くんも同じ気持ちなんだ。
相手のことを信じているけど、それでもちょっとだけ不安になる。
「でも、こうやって紗英と離れて生活すること選んだのは俺だから、そんなこと言っちゃいけないんだけどさ」
寂しそうに庄司くんが笑う。
離れて生活するのは寂しいけれど、庄司くんがやりたいことをやってくれるのが私の幸せだから、私は遠距離恋愛を選んだことを後悔なんてしていない。
そう伝えようとしたけれど、それは女将さんの言葉で遮られた。
「お待たせ。紗英ちゃんが食べたがっていたって聞いていた、天ぷら定食よ」
「庄司くんが伝えてくれてたの?」
「ああ。かぼちゃと海老の天ぷら、大好きだろ」
「うん。ありがとう」
目の前に広がる、美味しそうな匂いと、目にも美しい盛り付けの料理がテーブルに並ぶ。
「そういえば紗英。さっき何か言おうとしてなかったか?」
「……ううん。なんでもない。ね、冷めないうちに食べようよ」
こんなに美味しそうな料理が並ぶ中で、さっきの話題を盛り返すのはもったいない気がして、私は首を横に振った。
後でちゃんと、私の気持ちを庄司くんに伝えよう。
そう決意した私は、庄司くんと一緒に美味しい料理に舌鼓を打ったのだった。
美味しい食事を終えた私は、庄司くんとふたり、彼の住むマンションへと向かっていた。
マンションは、さっきのお店から歩いて十分ほどの場所。
「四年間ここに住んでたら、離れるの嫌になってさ。駅からだいぶ離れるから通勤には時間がかかるけど、いい街だから」