彼と私のかくれんぼ

「そういや、紗英を俺の家に招待したことってなかったな。高校時代も紗英の家に行くことはあっても、俺ん家に来たことなかったし」

「うちに来ても、ほとんどリビングで話してたけどね。しかも、お父さんの監視付きで」

恐らく同じことを思い出したのだろう。庄司くんも同じように苦い顔を浮かべていた。

「今だから言えるけどさ。お父さん、仕事の途中で家に帰ってきてたから、庄司くんが帰った後いっつもお母さんに怒られてたんだよ。その後、仕事の遅れ取り戻そうと夜まで仕事したりしてたの」

「……俺ってそんなに信用なかったのかな?」

「それは、庄司くんじゃなくても発動してたと思うよ。実際今は、だいぶおとなしくなったし」

「そうだな。帰省したときとか、夕ご飯ごちそうになるようにはなったもんな」

ちょっとだけご機嫌な庄司くんを見ていると、クスリと笑みがこぼれる。

「何笑ってんだよ」

「ううん。お父さんにキツイこと言われても耐えてくれてたなあと思って。ありがとう、庄司くん」

「別に。紗英のこと好きだったらあれくらいの意地悪耐えられるよ。幸い、俺には味方もいたしな」

味方って誰のことを言っているんだろう?

疑問に思って首を傾げる私に、庄司くんは意外な人物の名前を口にした。

「紗英のお兄さん」

「お兄ちゃんが、庄司くんの味方?」

「うん。初めて紗英ん家行ったときかな。帰り際に向こうから話しかけられて、連絡先交換したんだよ。それから、色々とお世話になってる」

「色々って、何?」

私の追及に、庄司くんは視線を外す。

「……そこは、男同士の約束もあって言えないんだ」

「私にも言えないの?」
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