彼と私のかくれんぼ

「でも、本当に私でいいの?」

「当たり前だろ」

「だけど、人と上手に喋れないし、何かあったらすぐ逃げちゃって隠れちゃう弱虫だし」

「そんなの、誰だって同じだよ。紗英の分まで俺が喋るし、何があっても見つけにいくさ」

そこで言葉を区切った庄司くんが、子どもみたいにニカッと笑った。

「俺は、紗英がどこに隠れても、見つけられる自信はあるよ」

「……そうでした。今日もすぐに見つかったもんね」

ついに溢れてきた涙を右手でぬぐって私も笑う。

そして、思いっきり庄司くんの胸の中へと飛び込んだ。

そんな私を、庄司くんの両手が優しく包み込んでくれる。

「こんな私だけど、これからもよろしくお願いします」

「え? いいのか?」

「いいのか、って。庄司くんが言ったんでしょ?」

「まぁ、そうだけど。でも、紗英がこんなすぐに決断してくれるって思ってなかったから」

確かに、昨日までの私だったらこんなすぐに決断してなかったかもな、って自分でも思う。

だけど今日、私は知ってしまった。

庄司くんのことを、自分が思っている以上に大好きで、誰にも渡したくないって思っていること。

そして、私だけかと思っていたそんな気持ちを、庄司くんも同じように持ち続けてくれているということ。

「こんなにも私が庄司くんのことが大好きで、庄司くんも私のことが好きだってわかったら、もうこれ以上離れて暮らすのなんて耐えられないもん」

私の言葉に、体を包む庄司くんの腕の力が強くなる。

「ありがとう、紗英」

「ううん。プロポーズしてくれてありがとう、庄司くん」

庄司くんと目が合うと、少しずつふたりの距離が縮まって、唇がそっと重なった。
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