彼と私のかくれんぼ
「紗英が、プロポーズされてる!」
「うわ。ホントだ! ちょっと白石、昨日の出来事からすごい展開早くない?」
「何かね、庄司くんはプロポーズしてくれようと思ってたみたいで……」
「だったらショージにとっては想定外の行動だったろうねぇ、昨日の白石」
「ご心配おかけしました」
昨日の私の大暴走のお詫びは、リエさんと辻井くんには昨日のうちに電話で済ませていたけれど、改めて謝罪をする。
「ま、白石の誤解が解けたのはよかったけど。でもあの意地悪女たちの悪行は結局言ってないんでしょ、ショージには」
「悪行って……」
「紗英は甘いのよ。会ったこともない相手にそんなひどいこと言うなんて最低な女たちじゃない」
私が庄司くんから逃げた理由のひとつ、庄司くんの同期の女の子たちに言われたことは、リエさんが追及の手を緩めてくれなくて話していた。
それは、菜穂子ちゃんにも伝わっていたらしく、ふたりは渋い顔をする。
「まあ、私もこれから先会うことはないだろうから、気にしなかったらいいかって」
「何を呑気に。ショージと結婚するんなら、会う可能性なんて山ほどあるじゃん」
「リエさんの言う通りだよ。会社の同期なんでしょ? どうなるかわかんないけど、披露宴に招待する可能性だってあるわよね?」
「……それも、そうか」
ふたりに言われて、初めて気づく。
そうだ。これから先も、庄司くんはあのふたりと同じ職場で働くわけだから、どこかで私も関わる可能性がないわけではないんだった。
「私だったらどうにかしてやり返したいって思うけどな」
「同意。いくら美人でも見ず知らずの人のこと、そこまで言うとか最低だよ」
ヒートアップするふたりをどうやってなだめたらいいか悩んでいると、会場の入り口に人影が現れた。