彼と私のかくれんぼ
これ以上ふたりのことを見ているのは精神的によくない。
「ったく……」
「ちょっと、リエさん、待って……っ!」
我慢の限界に近づいたリエさんを止めようと私が声を掛けたとき、庄司くんが私たちの方に視線を向けた。
「ちょうどよかった。俺の婚約者紹介するよ。紗英」
「あ。はい」
急に呼ばれたから、思わず声がどもってしまう。
私はアタフタしながら庄司くんの元へと駆け寄る。
「婚約者……?」
「ああ。昨日プロポーズして、いい返事もらえたんだ」
ニコニコしている庄司くんとは正反対に、彼女たちは少し怪訝そうな顔で私のことを見つめてくる。
頭からつま先まで、なんだかジロジロと見られているようで居心地が悪い。
思わずふたりから目線を逸らすと、庄司くんが私の髪の毛をひとすくいして、触りだした。
「何? 庄司くん」
「ん? 糸くずみたいなのついてたから」
「ありがとう」
お礼を言うと、庄司くんはいつにも増してにこやかに微笑んでくれる。
何だかいつもの二割増しくらいにキラキラしていて、かっこいいのには変わりがないんだけど妙な違和感を感じてしまう。
すると、横にいた庄司くんの同期ふたりもふたりで目線を合わせて何やら気まずそうな表情を見せた。
「具体的な日程は決まってないけど、休暇とかもらうときには頼むよ」