彼と私のかくれんぼ

「そ、そうね……。おめでとう」

「ごめんね。私たち、そろそろ行かなきゃ」

「え? 今来たばっかりだろ?」

唐突に告げられた言葉に、庄司くんが首を傾げる。

「元々用事があって、その前に来たからあまり時間がないの」

「そうだったんですか。ただの同期の頼みにここまでしてくれるなんて、ショージいい仲間持ってるね」

「そうですかね?」

辻井くんのその言葉にも彼女たちは苦笑いで応えている。

「ありがとな。じゃ、月曜日にまた」

「ええ。また」

「じゃあ、失礼します……」

こうして彼女たちは、入ってきたときとは正反対のテンションで、会場を後にしていった。

「……っ。ショージくんってば意地悪だねぇ」

「住吉の言ってることがわかんないんですけど」

「何しらばっくれてんのよ。紗英のここ見せつけたのなんて、意図的でしょ?」

菜穂子ちゃんが笑いを堪えながら、庄司くんの背中をつつく。

庄司くんは素知らぬ顔で、ただひたすら私の顔を見て微笑んでいる。

笑顔にごまかされそうだけど、菜穂子ちゃんが指差したのって私の首元だったよね……?

「あっ……!」

「あら、紗英。気づいちゃった?」
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