彼と私のかくれんぼ

菜穂子ちゃんが笑いながら私に抱きつく。

私は、昨日の新幹線での菜穂子ちゃんとの会話を思い出していた。

「春田さんの言ってたことって、私が結婚しちゃうってこと?」

「そうだよー、結婚して東京行っちゃったら、今までのようには会えなくなっちゃうんだから」

「悪いな、住吉」

謝る庄司くんに、菜穂子ちゃんは笑いながらも頬を膨らませた。

「しょうがないよ。紗英が望んだことなんだし。でもショージくん。紗英を泣かすようなことがあったら絶対に許さないからね」

「わかってるよ」

菜穂子ちゃんとは反対に、リエさんと辻井くんはとても嬉しそうだ。

「白石が東京来てくれたら、友達が近くに増えて嬉しいよ」

「僕とショージのほうが東京は先輩だからね。何かあったら相談してよ、白石さん」

「うん、みんなありがとう」

嬉しくて泣きそうになるけど、私はそれを必死にこらえて笑顔になる。

「ね、辻井くん。ここで写真撮っても大丈夫?」

何かを思い出したのか、菜穂子ちゃんがハッとしたように声を上げる。

「そうだなあ。あっちの作品がない壁なら大丈夫だけど、どうして?」

「いや、紗英とショージくんの幸せショットをユーコさんに送っておかないといけないなと思って」

その言葉にリエさんが大きくうなずく。

「ホントだ。ユーコにこのこと報告しておかないと、絶対あの子拗ねちゃうよ」

私は東京に行く前に会ったユーコさんの姿を思い出す。
< 48 / 51 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop