彼と私のかくれんぼ
菜穂子ちゃんが笑いながら私に抱きつく。
私は、昨日の新幹線での菜穂子ちゃんとの会話を思い出していた。
「春田さんの言ってたことって、私が結婚しちゃうってこと?」
「そうだよー、結婚して東京行っちゃったら、今までのようには会えなくなっちゃうんだから」
「悪いな、住吉」
謝る庄司くんに、菜穂子ちゃんは笑いながらも頬を膨らませた。
「しょうがないよ。紗英が望んだことなんだし。でもショージくん。紗英を泣かすようなことがあったら絶対に許さないからね」
「わかってるよ」
菜穂子ちゃんとは反対に、リエさんと辻井くんはとても嬉しそうだ。
「白石が東京来てくれたら、友達が近くに増えて嬉しいよ」
「僕とショージのほうが東京は先輩だからね。何かあったら相談してよ、白石さん」
「うん、みんなありがとう」
嬉しくて泣きそうになるけど、私はそれを必死にこらえて笑顔になる。
「ね、辻井くん。ここで写真撮っても大丈夫?」
何かを思い出したのか、菜穂子ちゃんがハッとしたように声を上げる。
「そうだなあ。あっちの作品がない壁なら大丈夫だけど、どうして?」
「いや、紗英とショージくんの幸せショットをユーコさんに送っておかないといけないなと思って」
その言葉にリエさんが大きくうなずく。
「ホントだ。ユーコにこのこと報告しておかないと、絶対あの子拗ねちゃうよ」
私は東京に行く前に会ったユーコさんの姿を思い出す。