彼と私のかくれんぼ
ひとり残された私。
ポツンと立っていると、あちこちで色々な声が上がっているのが耳に入ってきた。
「恐竜のイラスト持ってる奴いない?」
「え、これって校長先生だったんだ。マジ似てるっ!」
「ねぇ。野球部の部長、香水の瓶のカードだって言ってたよ。それも香水っぽくない?」
「え、ウソ。どうしよう、部長と喋れるチャンス?」
ペアを探そうと頑張る人、見つかって次に進む人。
憧れの人と交流が出来るチャンスをつかんだ人。
それぞれが色々な気持ちを抱えながら、このイベントに参加しているのがわかる。
そんな中、まだ気乗りになれない私は、どんどん人気のない場所へと足を踏み入れて行った。
確かこのイベントの締め切りは午後三時。
それまで誰にも見つからずにじっとしておこう。
そうしたら、誰にも話しかけられないし、私が話しかけることもない。
同じ武将を持っている人には悪いけど、ここは私が相手で運が悪かったと思ってもらうしかない。
にぎやかな校内で、あまり人が来ない場所……。
悩み抜いて私が見つけたのは、図書室の隅っこだった。
図書室の奥の奥、ほとんど人が来ることのない難しい本がたくさんある棚の側に、私はペタンと腰を下ろす。
ここなら誰も来ないだろう。
棚に背中を預けて、ホッと息をつく。
安心したら、なんだか眠くなってきた。
そういえば昨日、今日のことが気になってあまり眠れなかったんだった。
「ふわぁっ……」
小さなあくびをひとつつき、私はそっと瞼を閉じる。
そうするといつの間にか、眠りの世界へと落ちていた……。
ブーッ、ブーッ……。
私を眠りの世界から戻したのは、制服のポケットから聞こえてくるスマートフォンのバイブ音だった。