彼と私のかくれんぼ

辻井くんの個展が閉まる十八時以降に、今日の夜はこの五人で食事をすることになっているけれど、日中どうするかはまだ決めていなかったので、きっと三人が私たちをふたりっきりにしようと思って言ってくれているんだろうなと思った。

「じゃあ、お言葉に甘えて。行こうか、紗英」

「うん。また後でね」

「楽しんでおいで~」

三人に見送られて会場を出て、私は庄司くんに尋ねた。

「ところで庄司くん。どこに行くの?」

「紗英は行きたいところある?」

「ううん。特にはないけど」

「じゃ、俺に昨日のリベンジさせてもらってもいい?」

リベンジってどういうことだろう?

私が首を傾げると、庄司くんがフワリと微笑んだ。

「紗英さ、東京駅の駅舎を見てみたいって言ってただろ? それで昨日の待ち合わせ東京駅にしてたんだけど、紗英逃げちゃったからさぁ」

「……それは申し訳なかったです……」

知らなかったとは言え、私の為に色々と考えてくれていた庄司くんの気持ちを踏みにじるような昨日の私を、改めて反省する。

「いいんだよ。結果的に紗英の素直な気持ちとか聞けたし、あのかくれんぼのおかげで夜も燃えたし?」

「よ、夜のことはいいからっ……!」

恥ずかしくなって両手で顔を覆うと、庄司くんが「ハハッ」と大きな口を開けて笑った。

「ま、そういうことだからさ。今から東京駅、行こう?」

そう言って差し出された庄司くんの右手を握ると、ギュッと握り返してくれる。

「じゃあ、ご案内よろしくお願いします」
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