彼と私のかくれんぼ
心の中で盛大に謝りつつ、私は久保田先輩のクラスを出て、ひっそりとサンドウィッチの食べられる場所を探すことにした。
私が昼食場所に選んだのは、裏庭にあるベンチ。
色あせているそのベンチがある裏庭からは、別名『たぬき山』が見える。
江戸時代の頃、あの山にはお城が建っていて、高校のあるこの近辺は城下町としてにぎわっていたとか。
今はお城はないけれど、その名残で石垣が少し残っていたり、井戸があったりとかで、私も何度か遠足で足を運んだことがあった。
「はぁ、三時まで何しよう……」
サンドウィッチを食べ終えて、私はお行儀悪くオレンジジュースのストローを意味もなくくわえていた。
天気がいいとはいえ、季節はもう十一月。
日陰にいると、体感温度は少し肌寒く感じるため、外にずっといるのは辛いなあと感じる。
そろそろ図書室に戻ろうか……、とベンチを立ち上がろうとしたとき、後ろから私の名前を呼ぶ声がした。
「あ、やっぱり白石さんだ」
ニコニコと手を振るのは、今私を悩ませているイベントを考えた張本人、辻井くんだった。
「どうしたの、こんなところで」
笑顔を崩さないまま近づいてきた辻井くんは、そのままベンチまでやって来て、私の隣に腰を掛けた。
「お昼、食べてて」
「ひとりで? 友達は?」
「あー。辻井くんが考えたイベントで、ペアの人が見つかったから一緒に出掛けちゃって」
「そうなんだ。白石さんはひとりってことは、まだ見つけられてないの?」
「うん……」
「ね、白石さんの絵、どんなのだった?」
私の力ない声に気づいているのか、はたまた気づいていないふりをしているのか、辻井くんは笑顔のまま話を続けていく。