君想ふ花

帰りの車では、バイトの話や龍さんの子供の頃の話など
他愛のない話をしていた。

「てか、もう敬語じゃなくてええで!
 なつみは特別!」

「え、いいんですか?
 社員さんだしちゃんとしないとだめかなって」

「仕事の時はな!
 でも今はちゃうやろ?
 二人で会う時はタメにしてや。
 その方が俺も話しやすいし」

「じゃあ、そうしますね!
 名前なんて呼んだらいいですか?」

「ほら、もうそれ敬語やで!(笑)
 好きにしい。」

「慣れないー。
 じゃあ龍くんで!」


いつの間にか外はもう暗くなり、
大阪の街には季節外れのイルミネーションが光っていた。

「きれ〜!!!」

初めて車で通る御堂筋の景色に、私ははしゃいでいた。

「わたし、車運転できないから、新鮮!!」

「なつみ、イルミネーションとか好きなん?」

「うん!夜がすごく好きで、
 いつか摩耶山の夜景とか彼氏と見に行きたいなって」

「いいやん。
 ここ俺のお気に入りのスポット」

そういって走ってくれたのは
淀川の上の橋だった。

川には大阪の街の夜景と月明かりが映し出されていて
イルミネーションとは違った静けさが
妙に落ち着いた。

「ここ、私も好き。
 なんか落ち着くね」

「せやろ?これ、二人の秘密の場所な!
 ほかの男連れて来たらあかんで。」

秘密かあ。
彼女でもないのにちょっと特別な気分だ。

そんな話をしているうちに
私の家の前についた。
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