抱き締めたら止まらない~上司の溺愛につきご注意下さい~
そうこうしているうちに、次々と外回りに出ていき、オフィス内は、とても静かになった。

デスクワーク専属の社員が数人いるだけになった。電話番も兼ねているので、何かと忙しくなる。

今日は、藍原のマンションから出社したので、弁当はない。

ランチは食堂で簡単に済ませた。

そしてまた、午後の業務にとりかかった時だった。

受付から、光にアポなしの訪問者が。何かの手違いで、製品が届いていないとご立腹の様子。

とにかく光に連絡を入れ、帰社するよう伝えると、直ぐに下へと向かった。

大体の事は光からは聞いていたが、やはり私では話にならないと玄関ロビーで、叱責され続ける。

辛くなってきて泣きそうになった。

「失礼します、岡崎さま、営業部長の藍原と申します。うちの部下の手違いで、今回は大変ご迷惑をお掛けしました。とりあえず、こちらの部屋で詳しくお話をお伺いしたいのですが、宜しいでしょうか?」

やっと、わかるやつが出てきたと、叱責が止まった。

藍原は優しく背中を撫で、私にいう。

「奥の応接室に、お茶と茶菓子を持ってきて。よく頑張ったな、後は俺が何とかするから」

「はい、直ぐに」

全ての対応は完璧に終えることが出来た。それもこれも、藍原がしてくれたことだ。

私は藍原に深々と頭を下げた。

「ありがとうございました、藍原部長」

一気に気が抜けて、ポロポロと涙が落ちていく。

こんなことで泣いちゃいけないのに。

私は頭を上げることが出来なかった。
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