抱き締めたら止まらない~上司の溺愛につきご注意下さい~
そうか、私が早く、藍原のマンションを出たらいいのか。

…まだ空き巣の犯人は捕まっていない。

怖いけど、あのアパートに帰れば、事は収まる。引っ越し先を探そう。早くあのアパートだって出ればいい。

藍原に迷惑をかける前に。

その日、定時に仕事を終わらせた私は、藍原のマンションに帰った。

荷物をまとめて。

泊めてもらったお礼に、晩御飯の準備をして、テーブルに置いて、一緒に置き手紙も添えた。

荷物を持って、いざ、あのアパートへ。



「…着いた」

中に入るのは怖いが、私は部屋のドアを開け、中に入った。

…あの日のまま。

部屋は荒らされたまま。

私は顔を両手でパンパンと叩くと、部屋の片付けを始めた。

…片付けを始めて数時間、元々物は少なかった部屋だったから、大方片付けは一段落。

コンビニで買ったおにぎりを口一杯頬張った。

「おいひい」

あ、藍原部長、ご飯食べてくれたかな。

時計は、午後9時前。まだ、仕事中かもしれないな。

そんなことを思ってみたら、凄く淋しくなった。

部長に会いたいな。

そう思わずにいられなかった。


その時だった。突然のチャイム。

私は慌ててそれに出た。
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