抱き締めたら止まらない~上司の溺愛につきご注意下さい~
納得してくれた事に安堵し、私は布団に潜り込んだ。

「…ふぅ、自分の布団落ち着く」

なんて本音が出た。

…実は、藍原のベッドは落ち着かなかった。

藍原の匂いがしたから。…なんだか、藍原に抱き締められてるような錯覚に陥るから。

今は、そんな事、考えなくていい。

私は間もなくして深い眠りに落ちていった。

…翌朝、リビングで眠ったことを後悔する。

ツンツン。

「…ん」

私はまだまだ眠りから目覚めない。まだ、携帯のアラームが鳴るには、少し早い。

ツンツン。
「んー、あと五分」

ツンツンツン。
「もぅ、まだ早いよー」

うっすらと目を開けた私は、間近にある藍原の顔を見て一気に覚醒すると、飛び起きた。

「そろそろ起きないと遅刻するぞ」
「な、なな、何ですか、藍原部長!」

「…時間」
「え、ぁ、あー!!もう7時」

ヤバいヤバい!私は布団を畳むと、急いで身支度を始めた。

アラームが聞こえていなかったのか?いや、無意識に止めていたらしい。

バタバタと身支度を済ませると、いい匂いがした。

「今日は車で行け。朝食は取れ。上司命令」
「でも」

「裏路地で降ろすから」
「…すみません」

私は急いで朝食を摂ると、皿を洗い、歯磨きを済ませ、ようやく藍原の目の前に来た。

「お、お待たせしました」
「慌ててると怪我するぞ」

その言葉は、現実になってしまう。とは。
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