抱き締めたら止まらない~上司の溺愛につきご注意下さい~
…見られてる。

…かなり、見られてる。

周囲の視線がイタイ。

でも、無理もない。

今日の藍原は、髪を下ろし、眼鏡もかけていない。

いつもキリッとした怖い藍原じゃなく、誰もが振り返るほどのイケメンだ。

…その横を歩く私は、似つかわしくない。

不釣り合い。その言葉が一番お似合いだ。

そう思うと、この手を、離したくなる。

「どうした?渡辺」
「…この手、離してもいいですか?」

「ダメだ」
「どうしてですか?」

「…お前は何も分かってない」

と、不機嫌な顔に。

私もムスッとして、手をブンブンと振ってみる。

藍原は驚いてその手を止めた。

「何やってんだ?!」
「離してくれないから」

「何で離さなきゃならない?」
「不釣り合いだから!」

その言葉に首をかしげる藍原に、私は続ける。

「部長かっこよすぎるんです!」
「…どこが?」

私の言葉はまるで理解出来てないって顔。

「私は可愛くないから、イケメンの部長とは、不釣り合いなんです」

いたたまれなくなって、語尾が小さくなる。

「お前の方が分かってない」
「何をですか?」

「お前、自分がモテること、自覚してなさすぎなんだよ。もっと自覚してくれ頼むから」

「…そんな事!」

あるわけないのに。

「とりあえず落ち着け。顔真っ赤だぞ」
「…」

叫びすぎて、熱い。

ちょっとそこ座ってろ。

そう言うと、藍原は私をベンチに座らせ、自販機に向かった。
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