抱き締めたら止まらない~上司の溺愛につきご注意下さい~
藍原の姿が消えて、少しだけ落ち着いてきた途端、私は恥ずかしさのあまり顔を覆って俯いた。

何やってんだ私は。

これじゃあ、ただのバカップルじゃないか?

でも、本当に、視線が痛かったから。

それに、好きだといってくれる藍原に、私はどうしようもなく不釣り合いで。

それが恥ずかしくてたまらなかった。

「…私のどこが良いんだか」

自分で言葉にすると、虚しくなった。そして、心がツキンと痛かった。

「…はぁ」
「ねぇ、君、どうしたの?今一人?」

「…え?」

突然声をかけられて、顔をあげると、見知らぬ二人組の男が私に声をかけてきた。

「そんなに悲しそうな顔してないで、一人なら、おれらと遊びにいこうよ」

…くそ、こんな時にナンパとか。

私はスッと立ち上がると。

「ごめんなさい、一人じゃないんで」

そう言って、行こうとするが。

「またまたぁ、どう見ても一人でしょ」

もう、めんどくさい。

私は目一杯嫌な顔して行こうとするのに。しまいに手を捕まれた。

気持ち悪い!!!

「離して!」
「行こうよ、ね?」

「嫌だってば。離して!」
「そんな可愛い顔して怒ったって怖くないよ」

もう!!!

「俺の彼女に何か?」
「…ぇ」

後ろから抱き締められた。

上を向けば、藍原で。

もんのすごく怒った顔をしている。

「…チッ!男がいたのか。行こう」

ようやく男たちは、その場を去っていった。

私は大きくあっかんべーした。
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