抱き締めたら止まらない~上司の溺愛につきご注意下さい~
藍原の気持ちは知っている。

私だって、1週間も藍原に会えないのは寂しい。

けれど、あんなにまで気持ちを表に出されたのは初めてで、嬉しさに比例するくらい不安も増した。

「おはよ、明日香ちゃん。どうしたの?」
「え、あ、おはようございます。いいえ、何でもありません」

そう言うと、軽く深呼吸して、仕事に取りかかった。

今日は、朝早くから、光と頼まれていた取引先に向かうことになっていた。

荷物をもって、二人でそこへ向かうためロビーへ。

玄関が見え、その向こうでは、社用車に専務が乗り、秘書が後に続いて乗り込んでいると、よろけてしまい、それをすかさず藍原が助けていた。

…まただ。胸がぎゅっと痛んだ。

「明日香ちゃん、取引先にいってなんだけど」
「え、はい」

光が私に声をかけてきたので、そちらを見た時、藍原は私たちの方を見たのだが、私はそれに気づかなかった。
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