抱き締めたら止まらない~上司の溺愛につきご注意下さい~
何とか食べ終わり、食後のコーヒーを飲んでいるときに、疑問を正直にぶつける。

「藍原部長、どうして私を一緒に外回りに同行させたんですか?」

「昨夜、俺が言ったことは覚えてるよな?」
「…」

夢。

「お前は、回りの目を気にしなさすぎだ」
「へ?」

「これからは、極力俺の外回りに同行させるから」

「いや、意味がわからないんですが」

…睨まないで下さい。怖いです。

「俺は、渡辺が好きだ」

…夢…じゃなかった。

「お前は男に対して無防備過ぎ。自分が可愛いってこと自覚しろ。男除けの為の外回り」

…職権乱用と言うのでは?

と、口から出そうになったが。


「と言うのは、冗談だ」
「は?え?え?!」

どこからどこまで?

「デスクワークばかりでは、営業の仕事はわからない。たまには外回りをして、いろんな仕事を覚えろ。それがお前の糧になる」

…私の事を思ってしてくれたこと?

「ほら、行くぞ。午後からも外回りが数件ある」
「はい」

それぞれがらまた、二人で外回りに勤しんだ。

…営業の過酷さを、この身で痛感した。もっと頑張らないと。

とはいえ。

今日1日で、足がヤバいことになっている。

就業時間は過ぎ、営業部には人影すらない。

足はパンパン、慣れない外回り、高いヒールのせいで、靴擦れ。

もう、家まで帰れそうにない。
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