抱き締めたら止まらない~上司の溺愛につきご注意下さい~
ヤバい、痛すぎて泣きそう。

その時だった。

もう、藍原は帰ったものだと思っていたのに、まだ、オフィスにいて、私のところまで来た藍原は、私を抱き上げた。

「ちょっ、藍原部長!何するんですか?!」
「足、歩けないんだろ?」

「そ、そうですけど、だ、誰かに見られたら」

慌ててふためく私をよそに、藍原は至って冷静だ。

「この階のフロアはもう誰もいないし、俺は車だから、駐車場にそのまま降りる」
「でも」

「さっさと帰って手当てしないと、靴擦れも悪化するだろ?それから、それが治るまで、送迎するから」

「部長」
「心配しなくても、こんなことするのは、お前だからだ」

「…」
「お前に、俺がどういう人間か、知ってほしいし」

「部長」
「怖いだけじゃないってところを知ってほしいから」

そこまで言われると、もう、反論する言葉が見つからなかった。

…結局、自宅まで送ってもらった。

2階にあるので、階段もだっこで上ってくれて…

恥ずかしいやら嬉しいやら…。

部屋のドアの前、下ろしてもらった私は、鍵を取り、ドアを開けようとした。

「…部長」
「どうした?」


「鍵が空いてるんですけど」

私も藍原も嫌な予感しかしなかった。
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