溺甘同棲~イジワル社長は過保護な愛を抑えられません~
忍び寄る黒い影
守谷会計事務所のあるビルの前で車が止められる。
片瀬はシフトレバーをパーキングに入れると、助手席に座る優花の肩を引き寄せてキスをした。
甘い口づけをされ、優花は一瞬、自分がどこにいるのかわからなくなる。
片瀬のキスには時間も場所も忘れさせる効力があるあらしい。
唇が離れると、片瀬は間近で優しい微笑みを浮かべた。
「今日も仕事がんばれよ」
「うん。片瀬くんもね」
「今夜は取引先との会食があるから、少し遅くなる」
「わかった。会社まで気をつけて行ってね」
いつまでもこうしていたい優花だったが、名残惜しい片瀬の車を降りる。
行き交う車の流れにテールランプが消えていくのを見送っていると、「優花さん」と声をかけられた。
ハッとして振り返った先には、喜和子がニコニコと屈託のない笑みを浮かべていた。
「今日も送ってもらったの?」
「はい」
照れくささの中、小さく頷いて微笑み返す。