溺甘同棲~イジワル社長は過保護な愛を抑えられません~
◇◇◇
その日の仕事がもう間もなく終わろうという午後五時半。優花のスマートフォンが後ろのキャビネットにしまってあるバッグの中でヴヴヴと振動を伝える。
(もしかしたら片瀬くん?)
優花に電話をかけてくる相手は、ほかにいるとすれば両親くらい。つい期待に胸を躍らせながらスマートフォンを取り出すと、それは見ず知らずの番号からの着信だった。
間違い電話かな?と思いつつ、画面の上で指をスライドさせて耳に押しあてる。
優花が「もしもし?」と出ると、『宮岡優花さんですか?』と聞き慣れない男の人の声が問いかけてきた。
(……誰だろう?)
不思議に思いつつ「はい」と返す。
『倉田と申します』
「……倉田さん?」
相手が名乗るが、優花には今ひとつピンとこない。
(同級生の中にでもいたかな?)