溺甘同棲~イジワル社長は過保護な愛を抑えられません~
二週間前の同窓会で連絡先を交換したのは亜衣だけだが、彼女から番号を聞いたのではないかと即座に考える。
ところが電話の相手は、思いも寄らないことを言い始めた。
『トライリンクの倉田です』
「トライリンク!?」
片瀬の会社の人が、いったいどんな用件で連絡をしてくるというのか。
優花が突然、驚いた声を上げたものだから、向かいの席の喜和子が目をパチクリとさせる。
『はい、片瀬の秘書をしております倉田です』
そこまで淡々と名乗られて、優花は初めてその顔を思い浮かべることができた。
目が細くて鋭い、どこか神経質そうな秘書だ。
会ったのは、片瀬と再会した日と、守谷に同行してトライリンクへ行ったときの二度だけ。
顔の表情筋があまり動かないせいか感情が読み取れず、なんとなく冷たい感じがするため、優花はちょっと苦手意識を持っている。
その倉田が優花に連絡をよこすとは、どういうことなのか。