溺甘同棲~イジワル社長は過保護な愛を抑えられません~
(――もしかして、片瀬くんが事故に遭ったとか!?)
よくない想像が優花の頭をよぎった。
「あのっ」
『今日これから少しだけお時間をとれないでしょうか』
片瀬になにかあったのかと焦って聞こうとした優花を、抑揚のない一本調子の声が遮る。
まるで機械から発せられる、生成された声を聞いているようだ。その様子から、片瀬になにかあったわけではないみたいだが、秘書の倉田が自分に用事とはなんだろうか。
「……時間ですか?」
『よろしければ午後六時頃そちらに着きますので、そのままお待ちください』
「あの……片瀬社長もご一緒ですか?」
遠慮がちに尋ねてみる。
『いえ。到着次第、あなたのスマホを二回鳴らします。では』
「あっ、えっ……?」
優花が返答するより早く、電話が切られてしまった。