溺甘同棲~イジワル社長は過保護な愛を抑えられません~

時間をとれるかと質問してよこした倉田は、優花の了承を取りつけなかった。
これでは本当に機械。伝えることだけを自動で告げる音声ガイダンスでも聞かされたようだ。

一方的な態度をされた優花は、スマートフォンを耳にあてたまま呆気にとられる。


「優花さん? どうかしたの? トライリンクさん、なにかあった?」


喜和子にそう尋ねられるまで、優花は固まっていた。
喜和子は、優花が驚いて口にした社名を聞いて心配になったのだろう。


「……あ、いえ」


片瀬を抜きにしたうえ、倉田が守谷宛ではなく優花に直接連絡をよこしたのであれば、おそらく仕事とは別のこと。
ほかになにかがあるとすれば、片瀬のことではないか。それ以外に倉田と優花に共通の話題はない。

機械的な倉田の言い方のせいもあるけれど、優花は言葉で表せられない不安を抱え、午後六時を待った。
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