溺甘同棲~イジワル社長は過保護な愛を抑えられません~

「片瀬があなたに同居を持ちかけた、本当の理由を知りたくはありませんか?」
「……本当の理由?」


そんな話をされた記憶はない。
高校時代に優花に想いを寄せてくれていたのは事実らしいが、同居を持ちかけてきたときには特別な感情はなかったと片瀬は打ち明けた。


「片瀬には現在、結婚の話が持ち上がっています」
「えっ、結婚……?」


想像を遥かに超える話だった。にわかには信じ難いことだ。


「からかわないでください」


倉田がそんな冗談を言うタイプとは思えないが、悪いジョークにしか思えない。
優花は毅然と返した。


「からかったつもりはありませんし、嘘でもありません」


横から見た倉田の顔には、なにひとつ変化はない。笑みを浮かべるわけでもなく、目が泳ぐようなこともない。
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