溺甘同棲~イジワル社長は過保護な愛を抑えられません~
「つまり、あなたは単なる駒。片瀬が困っているところにたまたま現れただけのこと。ちょうど少し前に、お付き合いしていた女性と別れたばかりだったのですよ。まさにグッドタイミングだったわけです」
倉田は機械的な調子で、表情を崩すこともない。自分の言葉ではなく、台本でも棒読みしているかのよう。まるでロボットだ。
「きっかけはそうだったかもしれません。でも、片瀬くんは私に好きだって」
確かに彼はそう言って抱きしめてくれたのだ。再会したときのことを正直に打ち明けてくれた片瀬の気持ちに、嘘はなかったと思う。
反論する優花に、倉田は軽く鼻を鳴らした。
「それは片瀬の常套句。彼にとって挨拶のようなものなんです」
「そんなこと……」
あの言葉が嘘だとは優花には思えない。好きでもないのにそんなことを言えるのか。
「これまでもそうでした。来る者は拒まずで、簡単に愛を囁く。心にもないことを平気で言えるのです。女性を本気で愛したことはない」