溺甘同棲~イジワル社長は過保護な愛を抑えられません~

今、優花にマンションを出ていかれるのは、片瀬にとって痛手。政略結婚を持ちかけてきている相手への牽制力が弱まることになる。
そうなっては困るから、片瀬は優花を引き留めたのだろうか……。

(ううん、そんなことない。そんなはずがない)

考えたくない方に思考が傾いてしまい、優花は必死に頭を振って否定する。


「心当たりがあるようですね」


平坦な調子の倉田だったが、わずかに唇の端を上げた。

いいえと言えないのがもどかしい。そんな優花をあざ笑うかのように、さらに思い出したことがあった。


「私が仕事でトライリンクへ行ったときに、ビルの前に現れた女性がいましたが……」
「彼女がそのお相手ですよ」


片瀬が慌てたように彼女を連れ去ったのは、結婚の話があることを優花に知られたくなかったからなのではないか。同居を持ちかけた本当の理由を隠し通すために。
片瀬が恐れているのは、優花がマンションを出ることによって、その女性の目を欺けなくなること。
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