溺甘同棲~イジワル社長は過保護な愛を抑えられません~
力の出ない足で二階にある部屋へ着くと、優花はパンプスを履いたまま玄関に腰を下ろした。
(片瀬くんの好意に甘えるしかないのかも……)
部屋に転がり込めるような友人がいない優花には、いくら考えてみてもほかの手段が思い浮かばない。改めて期日を通達されて、気持ちが焦るせいもあるのかもしれない。
実家か片瀬のところか。
考え抜いた末、優花はその夜、震える指先で片瀬の連絡先をタップした。
『宮岡さん?』
三コールで出た片瀬に、名乗るより早く名前を呼びかけられて、優花は面食らってしまった。
「あ、あの今、だ、大丈夫?」
おかげで言葉がたどたどしくなる。
時刻は午後九時過ぎ。もしかしたらまだ仕事中かもしれない。
忙しいイメージのある社長という肩書きが、優花を逃げ腰にさせる。
『もちろん大丈夫。電話待ってたよ』