溺甘同棲~イジワル社長は過保護な愛を抑えられません~
優しく絡み合った舌が熱くて、優花は軽い目眩を覚えた。
(このキスに気持ちがこもっていないなんて。片瀬くんの心がここにないなんて……)
優花はとてもそう思えなかった。思いたくなかった。
片瀬のシャツをぎゅっと握り、迷いを振りきる。
(片瀬くんの心は、ちゃんとここにある。あるんだから……)
キスに没頭するふたりを現実に引き戻したのは、部屋に響き渡ったインターフォンの音だった。
午後九時過ぎ。こんな時間に誰が訪れるのだろう。
片瀬は唇を離し、至近距離のまま「ちょっと待ってて」と囁く。首を捻りながらインターフォンへ向かった片瀬は、モニターに映った顔を見て息を飲んだようだった。
(……誰なんだろう?)
優花のいる場所からはモニターが見えない。
片瀬がいつまでも応答しなかったからだろう。インターフォンがもう一度鳴った。
「今、行く」
素っ気なくそう答えたかと思えば、「ちょっと出てくる」と優花に言い置き、片瀬は慌てた様子で部屋を出て行った。