溺甘同棲~イジワル社長は過保護な愛を抑えられません~
呆気にとられつつ優花がモニターに近づくと、画面が暗くなる直前にほんの一瞬だけ姿が映り込む。
「えっ……」
静かな部屋の中に優花の声がやけに響く。
それは以前、トライリンクで見かけた女性――片瀬との結婚話が持ち上がっていると倉田が言っていた女性だった。
言いようのない不安が優花に押し寄せる。
政略的なものが絡むとすれば、持ち上がっている結婚はトライリンクに利益をもたらせるもの。そんなものをなにひとつ持っていない優花が、太刀打ちできるような話ではない。
優花が頑としてここに居座っていても、いくらどう見積もっても、敵う相手ではないのだ。
そもそも片瀬の気持ちすら、優花に向いていない。優花にはなにひとつ有利な点はないのだから。
相手の女性に対しても同じく片瀬の気持ちがないのであれば、会社の発展を考えたときに選ぶべきなのはどちらかが必然とわかる。
(――私じゃない)
片瀬が優花と一緒にいるのは、結婚を阻止するためだけ。倉田の言葉を借りれば、都合のいい駒なのだ。