溺甘同棲~イジワル社長は過保護な愛を抑えられません~
優花だって結婚に対して憧れがある。今すぐという話ではないにしろ、片瀬のそばにいることを選択するならば、その憧れは捨てざるを得ない。
しかも、一生愛されない覚悟も必要。いや、それどころか、いつ放り出されても不思議はないだろう。
それなら、そんな不安を背負いながらそばにいるより、今すぐ痛みを伴う別れの方がいい。じりじりと迫りくる別れと、満たされない承認欲求に苦しめられるのは耐え難いから。
優花はテーブルに広げたテキストを片づけ始めた。
(荷物をまとめて、この部屋を出よう)
さんざん迷っていた割に、決まれば行動の早い自分に驚く。
テーブルを綺麗にすると、今度は片瀬に与えてもらった部屋の荷物をまとめる。ここへ来たときに詰め込んだキャリーバッグに次々と自分のものを入れていった。
片瀬が戻る前に置き手紙をしたためて出て行こうかと考えたが、それではしっかりと自分の恋を終わらせられない。
きちんと片瀬に告げてから、優花は一歩を踏み出したかった。