溺甘同棲~イジワル社長は過保護な愛を抑えられません~
いよいよ優花にばれたことを悔しく思うからのか、それとも良心の呵責なのか。
「だから、もうここにはいられない」
優花は持っていたバッグから薄い封筒を取り出した。
「これ、同窓会に行くときに借りたワンピースの代金」
かろうじて手もとに残していた現金をかき集めたものだ。
片瀬が受け取らなかったため、優花はそれをリビングのテーブルに置いた。
「短い間だったけど、本当にありがとう」
頭を深く下げた優花は、ひと呼吸おいてからリビングを出た。すれ違ったときに横目で見た片瀬は、呆然自失といった様子で立ちすくんでいた。
玄関のドアが優花の後ろで閉まる。
ゆっくりと足を踏み出したけれど、片瀬が追ってくる様子はなかった。
倉田が言っていたことがすべて真実だと、身をもって思い知った瞬間だった。