溺甘同棲~イジワル社長は過保護な愛を抑えられません~
「あ、えっと……」
困った。なんと説明すればいいだろう。
さすがにこの荷物では隠しようがない。
優花が視線を行き来させていると、腕時計を確認した亜衣は、「ってことはないか。こんな時間だし」とすぐに考え直してくれた。
ひとまず追及を逃れられ、緊張が解ける。
「……亜衣は仕事帰り?」
「うん。今日はちょっと残業になっちゃって。それで、優花はこれからどこに行くの?」
ホッとしたのも束の間、再び亜衣に聞かれてしまった。目が思いきり泳ぐ。
亜衣が旅行だと勘違いしたときに、〝そうなの〟と機転を利かせて明るく返せなかった自分が情けない。
「……もしかして、なにか訳あり?」
すぐに察した亜衣が、目を細めて優花を見る。
「ははーん。さては、彼氏とケンカでもして飛び出してきたってところね」