溺甘同棲~イジワル社長は過保護な愛を抑えられません~

相手は片瀬だからと肝に命じて心に盾を装備していたのに、『待ってたよ』という甘い言葉を跳ね除けられない。それどころか、うっかり貫通を許してしまった。
優花のやわな防御では、まったく歯が立たない。社交辞令だとわかっていても、優花の胸はときめいた。

心して電話をかけたつもりが、初っ端から危険信号が点滅する。


『俺んところに来るって決めたんだよね?』
「あーえっとその……」


土壇場になって、再び優花が迷う。電話をかける前はもうそれしか道はないと考えていたのに、こうして片瀬の声を聞いてしまうと、本当にそれでいいの?と不安になる。


『ほかに行くところがないんでしょ?』


片瀬の言う通り、本当に行くあてがない。
スマホを耳にあてたまま優花がこくこくと頷く。


『だったらおいで』


囁くような優しい声なのに、その言葉の威力は絶大。優花の背中が強く押される。


『ね? おいで』


続けざまに繰り返され、優花は「はい、よろしくお願いします」と答えるしかなかった。
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