溺甘同棲~イジワル社長は過保護な愛を抑えられません~
なんて勘がいいのだろう。ケンカではないけれど、大まかに見れば正解だ。
「行くところがないなら、うちに来る? って言っても狭いけどね」
「えっ……」
「そんな顔してたら、放っておけないでしょ」
亜衣は十年前となにも変わらない。ひとりで困っている優花に声をかけてくれたのは、あの頃も同じ。
「ほら、行こう」
そう言って亜衣は、肩から提げていた大きな旅行カバンを優花から奪った。
「本当にいいの?」
「いいも悪いもないでしょ? 困ってる人に手を差し伸べなくて、誰に差し伸べるの? はい、行くよ-」
戸惑う優花の荷物を肩にかけ、亜衣が歩きだす。
そうして彼女に引っ張られる格好で優花がやってきたのは、駅から五分ほど歩いたところにある五階建てのマンションだった。片瀬の住むマンションとは、線路を挟んだ反対側だ。