溺甘同棲~イジワル社長は過保護な愛を抑えられません~
優花がマンションを出た後、どうしているだろう。
次に恋人としてマンションに住まわせる女性の算段でもしているか。それとも、観念して結婚に向けて動きだす決意をしたか。
どちらにしても、優花を追わなかった時点でふたりの関係は終結。
そんなことを考えて、優花の胸はチクチクと痛んだ。
「そういえば、滝口くんが凹んでたよ。片瀬くんに優花を連れ去られたって」
キッチンから亜衣のクスクスという笑い声が届くと同時に、コーヒーのいい香りが部屋に漂ってくる。
亜衣は、カップをふたつテーブルに置いてラグの上に座ると、そのうちのひとつを優花の前に滑らせた。
「ありがとう」
「優花が飛び出してきたのって、片瀬くんのところなんでしょ?」
「えっ……」
ズバリと指摘され、優花が言葉に詰まる。
「片瀬くんが駅の向こう側に住んでることは知ってたし、滝口くんが言ってたこともあるしね」