溺甘同棲~イジワル社長は過保護な愛を抑えられません~
照明をもっと落としてくれと言ったら、大吾に鼻で笑われそうだ。
まさか、優花がコスモジャパンから持ち掛けられた結婚話を知っていたとは。そのうえ、優花をマンションへ住まわせた本当の理由まで。
(いったいどこからそんな情報を?)
そう考えたときに片瀬が思い浮かぶ人物は、ただひとり。倉田以外にはない。
誰よりもコスモジャパンとのM&Aを望んでいたのが倉田だ。
だが、コスモジャパンの社長を通して結婚の意思がないことははっきりと示し、決着はついている。
その令嬢である絵麻によれば、今夜、片瀬のマンションを訪れたのも、倉田にそそのかされたそうだ。片瀬に一矢報いたければ、部屋に行ってみれば面白いことが起こるかもと。
優花に事実を突きつけられたとき、いきなり目隠しでもされたかのように目の前が暗くなった。
政略結婚の話も同居の真実も、いつか優花の耳に入るのではないかと恐れていた。ところが、気持ちを通わせ合った後には、そんなことすら忘れていた。幸せボケのなせる業だろう。
優花の言葉にすぐに〝違う〟と言えなかったのは、その衝撃があまりにも大きかったから。片瀬の気持ちを疑っている優花にそう言ったところで、信じてもらえるとは思えなかった。