溺甘同棲~イジワル社長は過保護な愛を抑えられません~
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その週の日曜日、優花はいよいよアパートを引き払い、片瀬のマンションへ向かった。
ほとんどの家具は備えつけだったうえ、優花自身の荷物は必要最低限。引っ越し自体も業者を頼むまでもなく、タクシーにふたつの旅行カバンと大きなキャリーバッグを積んでもらえば十分だった。
約三十分後、タクシーを降り立った優花は、片瀬が住んでいるという建物を見上げて度肝を抜かれてしまう。それは天高くそびえる、いかにも高級なタワーマンションだったのだ。
「片瀬くん、ここに住んでるの?」
マンションの前で出迎えてくれた片瀬に、そう確認せずにはいられない。
片瀬は「うん」と爽やかな笑顔で頷いた。
あまりにも立派な建物すぎて恐縮してしまう。
「案内するよ」と言う片瀬のあとを優花は追いかけた。
高く吹き抜けになったエントランスホールには燦々と光が注ぎ、大理石の壁やフロアを輝かせる。大きな窓の外には噴水があり、二体の天使の彫刻から水が流れている。
手入れの行き届いたヨーロッパ風の中庭だった。