溺甘同棲~イジワル社長は過保護な愛を抑えられません~
◇◇◇
いったい何杯飲んだだろうか。それすらわからない割には、まったく酔いが回ってこない。
片瀬は空になったグラスを再び大吾の方へ滑らせた。
ところが、すぐに出されたのはカクテルグラスに入ったスパークリングウォーターだった。
「これ以上はバーテンストップだ」
「……なんだそれ」
「ドクターストップの別バージョン」
言いながら大吾がクククと笑う。
「人から話を聞くだけ聞いておいて、アドバイスもなし?」
「ほぉ。百戦錬磨の圭人から恋愛相談されるとは思ってもいなかったよ」
百戦錬磨が聞いて呆れるだろう。
なにしろこれまでの恋愛は、それと呼べるものではなかった。
(つまり俺は、恋愛初心者ってことか)
情けなさすぎて涙も出てこない。