溺甘同棲~イジワル社長は過保護な愛を抑えられません~
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約一週間後。トライリンクの社長室には、倉田と相対する片瀬の姿があった。
椅子にゆったりともたれる片瀬の前で、倉田が手を出す。
「これでもう、倉田もなにも言えないだろう」
片瀬が差し出したのは、A4サイズの用紙が五枚。そこには、トライリンクの今後三年間の中期経営計画が詳細に記載されている。
日本経済を根底から支えるというトライリンクの経営目標のもと、さらに成長を加速させ、日本を代表するIT企業となるための計画だ。
ソフト開発は車載、社会インフラ中心に好調なため、引き合いが旺盛なインターネットサービスを中心に事業展開を推進し、成長著しい車載システム、ロボット、AIでの成長を軸とした事業展開を掲げている。
そのどれもが、叶わない夢物語の戯言ではなく、実績に即したものであることは、片瀬の秘書として仕えてきた倉田には一目瞭然だろう。
「コスモジャパンと提携しなくても、向こう四年間のうちに経常利益を三倍にしてみせるよ」
あっさりとそう宣言するが、片瀬には揺るぎない自信があった。