溺甘同棲~イジワル社長は過保護な愛を抑えられません~

「だからもうこれ以上、優花に余計なことを吹き込むのはやめてくれ。だいたい、秘書である倉田が、社長である俺の幸せを踏みにじるってどういうこと?」
「……お言葉を返すようですが、私はいつだってトライリンクの未来を考えて行動しております。ひいてはそれが、社長の幸せにもつながると」


一瞬怯んだように見えた倉田だが、さすがはAIロボットかと見まがう心の持ち主。すぐに立て直し、冷静に返してよこした。


「倉田にひと言、言っておく。倉田は恋愛した方がいい」
「……は?」


倉田は鳩が豆鉄砲を食らったような顔だった。まさか片瀬がそんなことを言うとは思いもしなかったのだろう。

倉田も人を好きになれば、きっと片瀬の気持ちが痛いほどにわかるだろう。


「よし、今度、俺が紹介するよ」
「け、結構です。恋愛にかまけている時間は私にはございませんから」
「そう言うな。これは上司命令」
「い、いえっ、本当に結構です」


倉田は目を泳がせながら二、三歩後退したかと思えば、社長室から逃げるように立ち去った。
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