溺甘同棲~イジワル社長は過保護な愛を抑えられません~
まるでホテルのようなフロントデスクまであり、二十四時間待機しているというコンシェルジュが、キャスターで優花の荷物を運んでくれることになった。
優花が見るものすべて、社長という肩書きから想像する生活を優に超えている。
上層階の住人だけが使えるという専用の高速エレベーターで、最上階の五十階へ上がる。
扉が開いた先にはふかふかの絨毯が敷かれ、足を踏み入れるのもためらうほど。だらしなく口が半開きになったままの優花は、片瀬に部屋へ招き入れられた。
「……おじゃまします」
優花が消え入るほどの小さな声になったのは、その豪華さに圧倒されたから。
ダークブラウンのフロアにオフホワイトの壁がよく映えた玄関は、高い天井からすずらんを模した美しいシャンデリアが吊るされ、やわらかな光を放っている。
広い通路を抜けると、四十畳はあろうかと思えるリビングが目の前に広がる。グレーを基調としたシックなインテリアでコーディネートされ、一画にはアーティスティックな絵画が飾られていた。
吸い寄せられるように大きな窓に近づくと、まるで空に浮かんでいるような感覚だ。眼下の街が遥かに遠い。